デザイン試作

デザイン試作

デザイン試作は、機能試作で検証された製品の原型に、好ましいデザインを考え、作りたい製品の形状を検証するための試作です。
考えた形の中に、必要な機能を持った部品が全て収まるかどうか。人が取り扱うものなら、形の上での使い勝手や製品に使用する素材等を、デザイン試作によって検討します。

一般的には、デザイナーが複数のデザイン案を提示します。このときは紙の上もしくは、パソコン上の画面での検討になります。関係者の同意が得られれば、次にこのデザイン案を形にして行きます。この場合は、形状と色などを確認する事になります。紙の上の検討と形になったものでの検討では違った意見が出てきます。形にする場合は、デザイナーが紙、粘土、プラスチック、ケミカルウッドなどの加工しやすい素材で製作したり、機械加工や光造形のような、加工機を利用します。このときは、設計担当者が関わり、加工図面が必要になります。いずれにしろデザイン費用と設計、加工費用が発生します。

デザインが優先される製品の場合は、機能試作よりデザイン試作を先に検討する場合もあります。その場合、デザイン試作に添った形で機能をレイアウトすることになりますが、どうしても収まりが悪い場合は、デザインを差し支えない範囲で変更して、対応することもあります。
一般的に、この様な作業のことをプロダクトデザイン、工業(インダストリアル)デザインと言っています。またこの作業は、プロダクトデザイナーといった専門家に依頼するケースが多いようです。

ものに溢れた現在、デザインの重要性は高まる一方です。製品デザインに十分な時間と費用をかけ、消費者の支持を得ることに成功したなら、その製品は永遠のベストセラーとなることも夢ではありません。

デザイン試作一覧

① デザイン試作のヒアリング

プロダクトデザインの依頼をうけてから、最初に行う大切なプロセスです。これからデザインを行うにあたって、クライアントの要望を聞き出す作業が中心になります。
要望の具体例を挙げてみます。

  • 機能を重視したシンプルな形状にしたい。
  • 販売ターゲットを20代の女性に限定したい。
  • ゆとりと癒しをテーマにしたい。
  • なるべくコストを抑えたい。
  • 天然素材を使いたい。
  • パッケージは出来るだけ小さくしたい。
  • 既存アイテムと調和を図りたい。

また、デザイナーサイドからは、時代のトレンド、対象とするお客様の嗜好、素材やコストに関する提案などが行われます。また、今後のデザイン業務の進め方や、デザイン費用についても細かく説明があります。

② コンセプトシートの作成

コンセプトシートは、クライアントとのヒアリングを受けて、デザインを起こす際の根拠となるものを、まとめたシートです。
なぜそのデザインに至ったか、あるいは何をイメージしてデザインしたか、参考にした資料やデータ、検討した素材などが記入されています。


コンセプトシートsample

③ デザインスケッチ

プロダクトデザインのスケッチは、ヒアリングに基づいて検討したコンセプトシートを出発点に、プロダクトデザイナーが最初にデザイン画を起こす作業です。

ほとんどの場合、デザインスケッチは手書きで行われます。また1点のみを描くことは稀で、通常2点~3点を、クライアントへの最初のデザイン案としてまとめます。

デザインスケッチはプロダクトデザインの出発点に過ぎず、そのままで製品デザインとなることはめったにありません。この後、このデザインスケッチをベースにして、さらにクライアントとのすり合わせや、作り手とのすり合わせ、使い勝手の検証が行われていく中で、随時変更が加えられ、ブラッシュアップされていきます。

デザインスケッチsample

④ 3DCGデザイン画

3DCGデザイン画は、ラフスケッチと同時か、あるいはラフスケッチ検討後に、さらに実際の製品に近いイメージを確認するために作成します。

3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)画像を使って、立体形状、光線や環境による見え方の違い、色、テクスチャー(表面の状態)などをシミュレーションします。

極めて精度の高い3DCGデザイン画は、製品のパッケージや広報の素材としても利用されることがあります。

3DCGデザイン画sample

⑤ 基本設計図の作成

プロダクトデザインの基本設計図は、ラフスケッチで起こしたデザインを、正面・横・上からの3面で表し、寸法を記入した図です。

この基本設計図は、製品の形を表す上での、最小限の寸法のみ記述されるので、実際に製品を作るためには、別途一つ一つの部品設計図が必要となり、この基本設計図だけでは不十分です。

しかし、形状を確認・検討するための立体モデル、「デザインモックアップ」を作るのには、必要十分な寸法が記載されている必要があります。

基本設計図sample

⑥ モックアップ(モデル)製作

デザインモックアップ(モデル)製作は、デザイン画と基本設計図をもとに、製品を立体的に表現したモデルを製作するプロセスです。

基本的には、形状を検討することを目的としているので、ウレタンフォームやケミカルウッドなど、加工しやすい素材を用います。

中には、最終製品に近いデザインモックアップを作る場合もあり、その時は素材はもちろん、色なども実際に使うものか、それに極めて近いものを使って製作します。

これらは全て手作りになるので、市販されている量産品で、外観が同等のものと比べると、とても高価なものになります。最近では、光造形や3Dプリンターを使いモデル試作を行う場合が増えています。

デザインライトモックアップ